みちぱん書評録

しがない書店員・みちぱんによる超絶個人的見解の書評記録

高田大介「図書館の魔女 第二巻」

図書館の魔女 第二巻

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著:高田大介 版元:講談社

 図書館のある一ノ谷は、海を挟んで接する大国ニザマの剥き出しの覇権意識により、重大な危機に晒されていた。マツリカ率いる図書館は、軍縮を提案するも、ニザマ側は一ノ谷政界を混乱させるべく、重鎮政治家に刺客を放つ。マツリカはその智慧と機転で暗殺計画を蹉跌に追い込むが、次の凶刃は自身に及ぶ!第45回メフィスト賞受賞作。 

(「BOOK」データベースより)

 

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みちぱん

さて、今回は引き続き図書館の魔女です!
第二巻ですね。

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ブンちゃん

第一巻はどんな感じで終わったっけ?

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みちぱん

キリヒトがハルカゼたちから文字を習って、
マツリカ様と指文字を開発していたところでしたね。
指文字は手話とは違い、伝えたい相手の
手の中に文字を打ちます。
目が見えなくても、耳が聞こえなくても
意思を伝えることができる方法ですね。
かの有名なヘレンケラーも使っていたものです。

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ブンちゃん

なんでマツリカ様は指文字を…。
手話で十分だと思うけど。

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みちぱん

マツリカ様いわく、指文字の方がより感覚的に
「話す」ことができるみたいですよ。
スピードも指文字の方が速いみたいですね。
ただ、指の微妙な動きを読み取れるのは
キリヒトくらいだろうと。

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ブンちゃん

対キリヒト専用言語ってわけか。
暗号みたいで良いね。
あと僕はあの人も気になっていたんだ。
ニザマからきた胡散臭いやつ。

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みちぱん

ミツクビのことですか?
マツリカ様たちのいる一の谷とは海を挟んで
反対側に位置する大国・二ザマの宦官宰相ですね。
ニザマは帝政ですが、実際に国を動かしているのは
ミツクビ率いる宦官たちだとか。

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ブンちゃん

マツリカ様に挨拶にきたみたいだけど、
怪しいかぎりだよね。

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みちぱん

ミツクビは図書館のことを
良く思ってないですからね…。

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ブンちゃん

要注意人物か。
それにしてもキリヒトの目と耳の良さは
ハンパじゃないね。

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みちぱん

足音だけでその人の年齢や特徴が
分かるし、歩いていれば
地面の下に空洞があることも
分かっていましたからね…。
それで例の枯れ井戸を見つけたわけですが。

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ブンちゃん

その枯れ井戸の中を通って
市井に出たんだっけ。
マツリカ様の身分じゃ、
おちおち散歩にも行けないだろうから、
ほんの気晴らしのつもりだったのかも。

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みちぱん

その散歩の道すがら、
通りすがりの運び屋のぼやきを
耳にして、そのたった一言から
マツリカ様は「ある計画」まで
たどり着くんですよね…。
これを詳しく説明しようとすると
30Pくらい引用しなければならないので、
みなさんの目で確かめてほしいです。
鳥肌立ちました。
ブンちゃんっていつもこんな感じなんですね。

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ブンちゃん

やかましいよ。
でもまぁ、マツリカ様がなんで
「魔女」って呼ばれるのか、その理由は
分かったような気がする。
君の驚いた気持ちも分かるよ。

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みちぱん

え?
ブンちゃんも鳥肌立つんですか?

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ブンちゃん

………それより、
もっと衝撃的なシーンが
この巻にはあったでしょうよ。

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みちぱん

………あぁ。
キリヒトの正体、ですね。

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ブンちゃん

そうそれ。
マツリカ様が川遊びするために、
キリヒトと儀仗兵を連れて出かけたときのアレ。

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みちぱん

川遊びをしていたところに、
マツリカ様への刺客が現れたんですよね。
それも有り得ないくらいの大男ふたり。
儀仗兵たちは戦うけど、瀕死に。
でも、キリヒトはその大男を倒してしまうんです。
特になにも武器を持たないで。

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ブンちゃん

元々、キリヒトって只者じゃないと思っていたし、
「そういう役割」なのかなって
薄々気づいてはいたけれど。
キリヒトは、マツリカ様を守るための
護衛だったんだね。

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みちぱん

しかもただの護衛じゃないですよ。
キリヒトは「切人」。
図書館の主を守るために存在する、
一子相伝の名だそうです。
しかも「キリヒト」の技は護身術ではなく、
「相手の息の根をなるべく早く止める技」だと。
キリヒトは「キリヒト」になると決まった日から
毎日殺しの訓練をしていたんです。
それこそ、文字を覚えることもなく。

 

 キリヒトが振り返った。それは一瞬のことだった。

 だがマツリカはその時にキリヒトの顔に浮かんでいた、なにか物言いたげな、どこか悲しそうな、まるで悪事を働きながら言い訳が思いつかずに困っている子供のような表情を目に留めた。時が止まったように、その面持ちがマツリカの目に焼き付いた。マツリカの初めて見た、キリヒトが初めて見せた、本当に悲しそうな顔だったのだ。

 それでもキリヒトはうすく笑っていた。それは悲しげな、切ない笑顔だった。

 マツリカはその後いつまでも、この悲しげな笑顔を忘れることは出来なかった。

(「図書館の魔女 第二巻」303Pより)

 

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ブンちゃん

自分の役割は分かりつつも、
図書館のメンツといると普通の少年のように
振る舞うことができたから
人を殺すために育てられたと
知られることが嫌だったんだね。

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みちぱん

きっとそうだと思います。
そういえば、ブンちゃんが今回最初のほうに
ミツクビの話していたじゃないですか。
あのとき、ミツクビはマツリカ様を殺すつもりで
あの場にいたらしいですよ。
それをキリヒトだけが分かっていた。
そしてミツクビを牽制した。
だからミツクビはそのときの暗殺を諦め
ただの「挨拶」をして帰ったみたいです。

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ブンちゃん

そんなことが…。
じゃあ今回の大男たちも
十中八九ミツクビの手か。

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みちぱん

おそらく、元締めは彼でしょうね。

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ブンちゃん

それにしても、キリヒトには驚いたな。
普通の男の子に見えるのに。
性格も純粋だし。

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みちぱん

そうなんですよ。
純朴な少年だからこそ、
その口から物騒な言葉が出ると
恐ろしいんですよね。

 

「相手が構える前に襲います。相手が抜くよりも前に切ります。キリヒトは挨拶をしません」

(「図書館の魔女 第二巻」396Pより) 

 

「振る舞いでわかるでしょう。わたしを近づけまいとするでしょう。もしその人が抜く素振りを見せる前にわたしが踏み込めれば、わたしが先に切ります」

(「図書館の魔女 第二巻」398Pより) 

 

「……甲冑と言ったって、目のところまで塞いでいるわけじゃないんでしょう?」

(「図書館の魔女 第二巻」399Pより) 

 

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ブンちゃん

キリヒト怖ぇ。

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みちぱん

キリヒトは自分の正体を伏せていました。
聞かれないかぎり、
「そういう場面」にならないかぎり、
言わないつもりだったんでしょうね。

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ブンちゃん

けれど、
「そういう場面」が来てしまったと。

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みちぱん

キリヒトの正体を知ったマツリカ様は
怒るのですが、マツリカ様自身も
「何に対して」怒っているのか
分からないんですよね。

 だのになぜキリヒトはあんな顔をしていたんだろう。謀っていたのはお前の方なのに、なんでお前がそうやって、辛そうな面構えでいるんだ。自らの務めを立派に果たしおおせていたというのに、なんでそうやって自分を恥じるように小さくなっているんだ。

(「図書館の魔女 第二巻」424Pより)

 

この子は私と一緒だ。私が望んで図書館の番人の家に生まれてきたのではないように、望んで特殊な教育を受けてきたのではないように、この子だってキリヒトの出る家系とやらに望んで生まれついたわけではないだろう。私が高い塔の魔女であることが私の選んだことではないように、この子がキリヒトであることは彼が選んだことではない。その少年時代を特殊な訓練に明け暮れて塗りつぶしてしまったことは自分で選んだことではない。そのあげく人にはない能力と心得を鍛え上げられて、余人から怪物と懼れられるに至ったとして、そんな顛末を誰が望んでいただろうか。この子が望んでいただろうか?

(「図書館の魔女 第二巻」438Pより) 

 

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みちぱん

暗闇の中、キリヒトの手に引かれて
マツリカ様はこんなことを考えていたのですが
途中で泣いてしまうんですよね。
キリヒトは後ろを見ていないけれど、
マツリカ様が泣いているのが分かってしまった。
そして自分も何故だか泣いてしまうんですよね。

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ブンちゃん

望んでこの役割を得たわけではない2人、
通じるものがあるんだろうか。

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みちぱん

キリヒトの正体が分かり、
マツリカ様に危険が迫っていると
発覚した二巻でしたね。
三巻はどうなるのやら…。

 

 

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