みちぱん書評録

しがない書店員・みちぱんによる超絶個人的見解の書評記録

高田大介「図書館の魔女 第四巻」

図書館の魔女 第四巻

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著:高田大介 版元:講談社

 海峡地域の動乱を期するニザマ宰相ミツクビの策謀に対し、マツリカは三国和睦会議の実現に動く。列座するは、宦官宰相の専横を忍んできたニザマ帝、アルデシュ軍幕僚、一ノ谷の代表団。和議は成るのか。そして、マツリカの左手を縛めた傀儡師は追い詰められるのか?超大作完結編。第45回メフィスト賞受賞作。 

(「BOOK」データベースより)

 

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みちぱん

さて、いよいよ最終巻です。
舞台の流れとしては
ニザマ→古アルデシュ→一の谷
という感じでしょうか。
そして盛大にネタバレするつもりなので
ご注意ください(笑)

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ブンちゃん

前回はたしか、ニザマに渡って帝に挨拶して、
ニザマ帝に気に入られたマツリカ様たちは
いよいよアルデシュも含めた
三国会議へ向かうんだよね。

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みちぱん

結果的には、和議は仮成立、といったところですかね。
あとはアルデシュの代表が国に持ち帰って
正式に通達を出すとのことで。
キリンの演説、かっこよかったですね。
でも驚いたのは、ニザマ帝の発言でしょうか。

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ブンちゃん

アルデシュへ戦争を持ちかけていながら、
手を返してこんな形で和議を持ち出すとは
完全に我が国の落ち度である、よって
責任をとり宰相ミツクビおよび
宦官組織は壊滅させ、自分も退位する、
的な発言のアレ?
やっとミツクビを排除する理由が出来たのに、
自分も退位しちゃうとは…
後継ぎの目途でもたってるのかな。

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みちぱん

ニザマ帝はもう高齢で、持病もありますからね…。
でもニザマ帝の後継ぎに成り得る人たちは、
全員ミツクビの息のかかった人と婚姻させられて
八方塞がりの状態なんですよね。
唯一、息のかかっていない太子は
亡くなったことになっています。

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ブンちゃん

亡くなった「こと」に?
つまり、まだ生きている?

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みちぱん

はい、ミツクビから隠すために。
しかもその太子の護衛にマツリカ様のおじいさん、
つまり先代の図書館の魔法使いとその随身
先代のキリヒトがついているというのですよ。

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ブンちゃん

そりゃあさすがのミツクビでも
見つけられないし、見つけたとしても
うかつに手が出せないな。
そういえば、肝心のミツクビはどうなっているんだ?

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みちぱん

ミツクビは、マツリカ様たちがニザマに渡ってきた時点で
このような流れになることを大方予想していて
この会議のときにはすでにとんずらしています。

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ブンちゃん

なんと逃げ足の速い…。
まだ諦めないつもりか。
というより「諦め」を知らないのかもしれないね。

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みちぱん

和議が成ったところで、マツリカ様はこの大陸にきた
もうひとつの仕事をしにいきます。

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ブンちゃん

マツリカ様の左腕に暗示をかけた
刺客「双子座」に会いに行くんだったね。
この呪いの仕組みを教えろと。

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みちぱん

そうですね。大方の居場所はすでに分かっていました。
人形劇に使われていた詩が古アルデシュの
武勲詩であったことから、そのあたりを
根城にしているだろうとマツリカ様は
踏んでいたんです。

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ブンちゃん

その道中で、これまた厄介な刺客に
出会っちゃったんだよね。
なんだっけ…恐水病?

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みちぱん

それです。狂犬病、とも言いますね。
その恐水病に感染した犬たちが襲ってきて、
それに気付いたマツリカ様が傷を負わない、
そして唾液や血にも触れないようと
まわりに注意をうながしたのですが、
ヴァーシャルヘイだけ噛まれてしまうんですよね…。

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ブンちゃん

毒が全身にまわる前にと、
マツリカ様の指示でキリヒトが
ヴァーシャルヘイの右腕を切り落とす
あのシーン…痛かったな。

 

キリヒトは唇を噛んで、坂の上へ急ぐ。病者を切り捨ててきたことはもういい。だが仲間の腕を切り落とした手応えは、人殺しの業を叩きこまれてきたキリヒトでも不愉快な感触となって手の中に残っていた。

(「図書館の魔女 第四巻」292Pより)

 

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みちぱん

うぅ…。痛い…。
ヴァーシャルヘイは手当を受けるため
アルデシュ兵に連れられていきました。

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ブンちゃん

そこからたどり着いた双子座の邸は
すでにミツクビからの刺客がいて
相打ちで瀕死の状態だったんだよね。
まぁそこで、マツリカ様の左腕の麻痺は
双子座の操る「犬笛」が鍵だったことが
分かったんだけど…。

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みちぱん

ここである重大な事実に
マツリカ様たちは気付くんですよね。

 

アキームはそっと手を伸ばして、双子座の顔を覆った仮面に手をかけ、後頭部にかけて結ってあった紐を解いた。アキームが仮面を外す。

 双子座の素顔があらわになり、一同が息を呑んだ。

 双子座というその異名―――その二つの意味を彼らは知った。かつて川縁でマツリカを襲った二人組の巨人たち、そして祝祭の雑踏に人目を集めていた痴話喧嘩を演ずる人形芝居、いずれもが二体の人形によって演じられていた。双子座の異名は、双子の人形を操ることに依るのだろうと彼らは漠然と思っていた。だがそうではなかった。

 双子座は文字通りに双子だったのだ。

(「図書館の魔女 第四巻」394Pより)

 

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ブンちゃん

文字通りの双子…。

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みちぱん

双子座の顔が、瓜二つだったんですよ。
ヴァーシャルヘイとね。

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ブンちゃん

ヴァーシャルヘイも、ミツクビからの
刺客だったというわけか…。

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みちぱん

双子座は、互いを人質に取られて
脅されていたみたいなんですよね。
思えば、最初の大男の襲撃時も
ヴァーシャルヘイが手を引いていたんですよ。

 

マツリカはキリヒトに持ってこさせた葡萄酒を椀に注いで手に持っていた。衛兵らはさすがに酒は断った。ヴァーシャルヘイが左手の笛を静かに鳴らしている。

 頭上の絶壁の上から鳥たちがどっと飛び去る羽音がする。

(「図書館の魔女 第二巻」289Pより)

 

―――キリヒト、どうした?

「耳鳴りがします」

(「図書館の魔女 第二巻」290Pより) 

 

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みちぱん

ヴァーシャルヘイは薬漬けにした大男を
犬笛でおびき寄せていたんですよ。
キリヒトは耳が良いから、動物にしか聞こえない
犬笛の音が耳鳴りとなって聞こえたんでしょうね。

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ブンちゃん

そうか…。確かに三巻の人形劇のときも
あの場所に誘導したのはヴァーシャルヘイだし、
あのときのキリヒトの様子も変だった。

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みちぱん

運ばれたヴァーシャルヘイは恐水病を
発症することもなく、一命をとりとめたのですが
一の谷に帰る航路の途中で、
みんなに正体がバレたと知って身投げするんですよね。

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ブンちゃん

相方のために動いていたのにその相方は死に、
自分の正体も知られ、殺すべき人たちに助けられ、
…そりゃあ死にたくなるわな。

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みちぱん

でもその後にマツリカ様も飛び込むんですよ。
カナヅチなのに(笑)
あの図書館の魔女が、考えるよりも先に、
後先考えずに反射的に飛び込んだわけです。
マツリカ様がヴァーシャルヘイの包帯を
掴んでいたため、それを辿って救助が成功するのですが…。

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ブンちゃん

ここのシーンはぜひ実際に読んでほしいな。
泣けてくるよね。
相方の最後の言葉とかさ。

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みちぱん

双子座の邸で、マツリカ様が相方に
「最後に言いたいことはないか」と聞いたんですよね。
そこで彼は何も言わずに気絶したと思われていたんですが
耳の良いキリヒトには聞こえていたんです。
彼は「フェラム」と言っていたそうです。
それは古アルデシュの方言で「片割れ」という意味だと。

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ブンちゃん

それだけでは彼が何を思っていたか
分からないけれど、確かなのは死ぬ間際、
考えていたのはヴァーシャルヘイのことだった、
ってことだよね…。

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みちぱん

一の谷に到着後、ヴァーシャルヘイは順調に回復して、
再び古アルデシュへ帰ることになります。
そこでマツリカ様の間諜としてはたらき、
ミツクビへの復讐の機会を窺うと。

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ブンちゃん

それからキリヒトにも試練があったよね。

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みちぱん

図書館の先代たちから招集がかかるんですよね。
おそらくは太子関係だと思いますが…。
マツリカ様は、一度キリヒトを手放す決心をします。
そこで「キリヒト」を捨ててこいと、
見送りには出ずに一通の手紙を渡します。

 

Adtentior tuo passui qui revertere

Kalendis totis plicans digitos ad diem tui adventus

Apud archivum turris altissimae ted opperibor.

Reditus si tibi coactus non fato neve natu siet,

Itinera nostra conjuncta tete numquam perduxint,

---quin tuum nomen novum susurretur.

 (「図書館の魔女 第四巻」617Pより)

 

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ブンちゃん

………呪文か?

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みちぱん

ちなみに訳はこれです。

 

帰還を告げる足音にいっそう耳を澄まし、

月宣言日のめぐるたび、手の中に指折り数えて、

高い塔の書庫に、お前を待とう。

お前が宿世に拠らず帰ってくるなら

私たちの道が再び合流し、お前を導いて

―――お前の新しい名は囁かれるだろう

(「図書館の魔女 第四巻」620Pより)

 

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ブンちゃん

ようは「待ってるよ」ってこと?

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みちぱん

それだけじゃありませんよ。
文の最初の一文字をつなげてください。

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ブンちゃん

"A"…"K"…"A"…"R"…"I"…。
「あかり」…これって…。

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みちぱん

「アカリ」というのは、
キリヒトが「キリヒト」になる前の名前です。
二巻で一回だけ出てくるのですが
彼が生まれてからほんの数年間だけ呼ばれたその名を
マツリカ様はちゃんと覚えていたんですね。

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ブンちゃん

「お前が宿世に拠らず帰ってくるなら」…
文字通り、「キリヒト」を捨ててこいってことか。

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みちぱん

任務が終わって帰ってきたら、
「キリヒト」でなく「アカリ」と
呼んでくれるんですかね…。
図書館の魔女はこれでおしまいですが、
続編が出ているので、そちらも読みたいですね。
では最後に、書評家である東えりかさんの
書評を引用して終わりにしたいと思います。

 

この物語は『指輪物語』や『ハリー・ポッター』にも引けを取らない、いやそれに勝る物語だと断言する。読み終わった人は語ってほしい。語り合う人ができたら、もっと増やしてほしい。本当に多くの人に手に取ってもらいたのだ。その人たちも裏表紙を閉じたあと、私と同じようにつぶやくはずである。「すごい」と。

(「図書館の魔女 第四巻」642Pより)

 

 

 

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